大会準備委員会挨拶

~長寿につながる健康心理学~

日本健康心理学会第27回大会
準備委員長 金城 昇(琉球大学)

 第27回日本健康心理学会のテーマは「長寿につながる健康心理学」です。

 このテーマを設定した理由の一つに,沖縄の長寿ブランド崩壊があります。何よりも長寿県を復活させる力の醸成に健康心理学が貢献できるものと考えたからです。この長寿に「つながる」のつながるに敢えて意味づけをすると,公衆衛生(健康づくり,ヘルスプロモーション)の概念ともなっているソーシャルキャピタルが関連してきます。ソーシャルキャピタル(SC)とは,「人々の協調行動を活発にすることによって,社会の効率性を高めることのできる『信頼』『規範』『ネットワーク』といった社会的仕組みの特徴(Putnam,2006)」,そして「心の外部性を伴う信頼・規範・ネットワーク(稲葉:2005)」と定義されています。これを普通に「絆」「つながり」などとも言ったりします。

 この「絆」「つながり」と健康との関連を実証した例にロゼト効果があります。1950年代に,アメリカ・ペンシルバニア州のロゼトというイタリア農村からの移住者の住む小さな町で,喫煙・食事・運動習慣等の生活習慣が周辺地域の住民と変わりがないのに,心筋梗塞による死亡率が低かったという実例です。その原因と考えられているのがSC,すなわち「つながり」です。

 これまでの案内でも述べてきたように,ロゼト効果同様,沖縄の長寿が県民個々人の健康行動のみで成立していただけでなく,この「SC:つながり」,沖縄の方言でいう「ゆい(結い)マール」で築かれてきたことが証明されつつあります。「ゆいマール」とは,人びとの結びつきと絆のこと,まさにSCと健康長寿との関連です。この「つながり」をどう創りだすかを敢えて「長寿につながる健康心理学」としました。

 実際にプログラムも「健康心理学の研究成果から実践を動かす:研究推進員会」「沖縄から考える健康心理学―ソーシャルキャピタルと地域の力:準備委員会」「健康心理学を活かす!―実践例に学ぶ健康づくりの理論と方法―:一般公開」など大会テーマに迫る企画が目白押しです。そして,学会場のOISTからは「ADHD先端研究にみるQOL向上のための心理社会的支援」と題して最先端の研究報告があります。 さらに,研究発表もあらゆる年齢層を対象にしたもの,個々人,職場・地域を対象にしたものなど17に分類した課題別のポスター発表が137題に及んでいます。

 この二日間の研究発表,各委員会企画シンポジウム,ワークショップ,そして懇親会での「つながる」をキーワードにした研究交流で大会テーマに迫り得ればと思います。